私は日本の美大卒なので、当然美術系予備校に通っていました。
2年間の浪人生活を経て武蔵野美術大学に入学。
浪人生活を経験している人で、予備校にいい思い出のある人はあまり居ないと思います。
そんな私は今インドネシアの予備校で高校生に絵を教えています。
そこで受ける数々のカルチャーショック。
日本では、志望学科によっても違ってきますが
基本的に予備校では静物画・人物画が多いかと。
こっちでは圧倒的にガンバル・スワサナです。
ガンバルとはデッサンのことで、スワサナはシチュエーションのこと。
日本語でいうと「群像」というかんじかしら。
先生があるテーマを出して、それに沿って絵を書く。
例えば
「あなたはインドネシアのホテルで働いています。海外から沢山のお客さんがやってきました。
あなたはインドネシア人として誇りを持って働いています。それを描きなさい」
という感じ。
まぁ、この題材ならまぁ描ける。
私が教えるときは題材を考えられないし、インドネシア語が分からないので
5W1Hを生徒に一人ずつ答えさせてそれを組み合わせて題材を作ります。
アシスタントが居る時は、アシスタントに題材を考えてもらいますが
朝一の授業の時は、アシスタントがこぞってサボるので
大体あたし一人。
そして、そのテーマというのが結構シビア。
「テロがおきた!建物に人が立てこもっている!」
なんて題材もあれば
「死のプロセスを描け」
なんていう題材もある。
そうすると、人が死んでる絵とか打たれてる絵とか
自殺する瞬間の絵とかそういうものがゴロゴロでてくるわけです。
予備校で出されるテーマとしてはこんなにシビアなものが日本であったら…
いや、まずあり得ないな。
もう一つ衝撃を受けたのが
アシスタントが生徒の絵をガンガン破りまくること。
その時はあたしと他の先生と合同授業でアシスタントも6人くらいいたのですが
アシスタントが、講評中笑いながらがんがん破く・燃やす・踏む!
あたしはショックで見てられなくて教室から出て行きました。
「なんで生徒の作品にこんなことするわけ!?一生懸命書いてるのに!」
と思った。
日本の昔の予備校でも大学でも、こういうことは行われてたらしいけど
自殺者が次々出てからは、今はまずやられることはないらしい。
もちろんあたしもそういう教育を受けてない、いわゆる「ゆとり」なので
目の前で生徒の作品が燃やされた時は
自分の作品じゃないのに泣きそうになりました。
別の先生に
「なんでこんなことするんですか」
って聞いたら
「生徒のメンタルを強化するため」
とのこと。
ダラダラ書いてる生徒が自分のデッサンを燃やされて
ショックを受けて、闘志を燃やすとのこと。
理解できる。
理解はできるけど、できるけど!
授業が終わった後は大量に破かれたデッサンの山が。
あたしはとても切なくなりました。
| 授業が終わった後の教室の床 |
自分で破くならいいけど、
他人に破かれるなんて、そんなものがあっていいハズがない!
日本人のメンタルが弱過ぎだと言われればその通りだし
反論もできないけど
それよりも、なによりも
デッサンっていうのは自分の表現であって
気持ちの発露なんだからそれを他人によって破壊されるなんて
あたしは許せない。
「次は、破かれないような絵を描くぞ」
って思ってくれるならいいけども。
私は、生徒の絵には線一本入れたくないし
消したくないし
もちろん破きたくもない。
だってそれは私の作品じゃなくて
彼らの作品だから。
むむむ…


