暫くは毎日連投していきたい。
さて、前回から続いている強化合宿編。
問題は、時間と場所。
キャンプというからにはまず「山」。
バンドンから車で1時間半ほど山を登り、山の中のキャンプ場へ。
私とオギとベベックとラディットが引率組だったわけですが
私たちは、キャンプに向かう前に温泉へ寄り
ぬくぬくとお風呂に浸かってからキャンプ場へ。
着いた時間は夜11時。
この時まだ私は、みんながキャンプ場で遊んでいるもんだと思っていたので
11時じゃ、あとはもう寝るだけだなぁ。
なんて思っていたのですが、
結果から言うと、朝まで一睡もできなかったのです。
強化合宿は常に夜に行われるものだそうで
真っ暗な山の中、懐中電灯だけを頼りに行動しないといけないということは
新入生である2年生の不安を煽ります。
そして、いつも通い慣れた学校ではなく
地理感の無い山の中。
不安と緊張の中で強化合宿は行われるのです。
キャンプの地図。 住所ひとつ載ってないところが 本当にインドネシアです。 |
私たちが着くと、そこにはたくさんの大小のテントが。
3年生がコーヒー入れてくれたり、カップ麺作ってくれて
キャンプで食う暖かいインスタント食品の美味さは
日本もネシアも変わらないなぁとしみじみ感動しながら
のほほんとばくばく食べていました。
この時には、「何かが始まるらしい」ことは聞いていたのですが
それがまさか、朝まで徹夜で行われるものだとはつゆ知らず
カップ麺を食べたあとに歯磨きをして、私はすでに寝るモード。
私たち引率組のためのテントも、すでに学生が張っておいてくれていたので
すでに道中でご飯を食べていた事もあり、
特にやることもない私たちは
暖かいもののんだり、おしゃべりしながら
そのイベントが起こるのを待っていました。
夜中1時。
なにやら学生たちが動き始めたので
なにかしらと思っていると、どうやらそのイベントが始まった模様。
2年生は4つのグループにわかれて、真っ暗でとても寒い山の中を
懐中電灯だけでポイントに向かって歩いて行きます。
ポイントは全部で4つ。
そしてそのポイントごとに、
たき火が燃やされ
そこに先輩たちが待機しているのです。
その4つのポイントはそれぞれ
POS1、Panitia PSDP 2014
(PSDP)pengenalan studi desain produk
プチ・オリエンテーション(自己紹介など)
POS2、Masa INDES
(INDES)プロダクトデザインの子に所属義務があるグループ
INDESの説明会
POS3、Masa liga KMSR dan Pasar seni
(KMSR)デザイン美術学科の子たちが所属するグループ
KMSRの説明会
POS4、Alumni
(Alumni)=卒業生の意味
先輩5年生からの説明会
と、役目が分かれています。
(POS5はまた後で。)
予定表を貰いました。
私は、一番最初のところから、2年生のグループの後を追う形で
着いていきました。
この合宿をCAPOLAGA(カポラガ)と呼ぶのですが
このCAPOLAGAがある前に
2週間、デッサンしたり、モデリングしたり、デザインの勉強があって
その最終儀式がこのCAPOLAGAにあたるそうなのです。
なのでバイオグラフィーを申告するところでは
まあいわゆる新入生の自己紹介みたいなもので
これからプロダクトデザイン専攻に所属するにあたって
先輩たちに自分の名前だったりとか
この2週間で学んで来た事で生まれた悩みとかを相談するようなところになっています。
そういう事は、日本だと
普通教授が担う役目だと思うので、
先輩たちがこういう風に全面的に引き受けるっていうのは
私にはかなり理解しがたいものでもありました。
次はMasa INDES。
2年生が、そのポイントに近づいていくと、
「うさぎ跳びして来い!!」
と、3年生の先輩たちが叫び、2年生はなぜかうさぎ跳びでそのポイントへ。
うさぎ跳びに意味あるのか?って感じですが
いわゆる辱めに近いですかね。
そして2年生は、先輩たちに
デザインについての知識や、経験や、考えなどを全て話さなくてはならないのですが
そこで、考えがまとまっていなかったり
知識が足りなかったりすると
「お前、バカじゃねーの!?」
とか
「ふざけんなよ!」
とか、めちゃめちゃ叱責されます。
それを言う先輩たちっていうのは、いつも私によくしてくれる子たちばかりなので
私も見ていてなんだかオロオロしてしまいます。
変な発言をすれば、大勢の先輩たちに大笑いされ
バカにされ、怒鳴られ、そのプレッシャーの中で発言するというのは
とてもメンタルが鍛えられるわけです。
そしてこの暗さ。
そして寒さ。
周りは真っ暗で
ポイントにあるのはたき火のみ。
暗さの中で、顔がよく見えない先輩たちに
自分の小ささや未熟さを確認させられるのです。
3つ目のポイントは、Masa liga KMSR dan Pasar seni。
ここでは、デザインプロダクトのみならず
デザイン・美術学科すべての学生が所属するおおきな枠組みの中で
2つ目のポイントと同じようなことが行われます。
暗くて写真が代わり映えしない… |
そして4つ目Akumni。
待機しているのは大先輩、5年生。
今まであったたき火もそこには無く
坂の上で仁王立ちして待機している先輩たちが、
懐中電灯で2年生を照らして尋問していきます。
今までの中で一番不安な顔を覗かせる2年生。
5年生は、私が一番親しくしてる学年なので
私も一緒に坂の上で2年生の様子を観察していたのですが
「クロもそこに座って体験してみなよ」
なんて言うので
こんなにまじめな場所に、私が入っていって雰囲気ぶちこわさないかしら
と不安だったのですが、
そうそうできる体験ではないので
躊躇しながらも2年生と一緒に並んで正座。
そうして一緒に並んでみると、
気分は本当に惨めになるのがよくわかります。
坂の上から懐中電灯で照らされ、
先輩たちの顔は一切見えない。
刑務所に入ったらこんな気持ちになるかも。なんて考えるくらい。
尋問してくる子たちは
顔も名前もよく知っている友達ばかりなのに、
気持ちはすごく不安になります。
私がヘラヘラしてると
「オイ、笑ってんなよ!」
の一言。
ごめんなさい、こわいです。
そんな中、私に浴びせられたヤジは
「Jangan Putih Putih!!」
英語に直訳すると
「Don’t Be So White!」
っていうところでしょうか。
白すぎなんだよ!
みたいなことです。
暗闇に溶ける茶色い肌のネシア人に混じって
白い肌の日本人の私はそんな風にやじられて
ああ、白くてごめんなさい。
非常に不条理なヤジなのにそんな気持ちになります。
ネシアの教育は、前大統領の方針もあって
軍隊がベースになっているそうで
アート系の学生といえども、まるで体育大学のように
マッチョな教育が行われる訳です。
こうして学生は、
恥を捨て
恐怖に打ち勝ち
自分の気持ちを表にさらすという
そういうことを身につけて行くのです。
そうして4つ目のポイントを終え、私も皆にお礼をいい
最後のイベントへ。
POS5:POS Persiapan inisiasi INDDES
INDESの始まり
一周し終えた2年生は
全員集められます。
男子は腕立て
女子は腹筋をさせられます。
といっても普通の腹筋はなく、
一列にならび、自分の足を、自分の後ろの人の肩に乗せ
全員で一緒のタイミングで腹筋をしないといけません。
その間にも、
ヤジは休む事無く飛び続け
「チンタラやってんなよ!」
とか
「ふざけてんじゃねーぞコラ!」
なんて、今までで一番ひどい罵声が飛び交います。
腕立てする下級生を取り囲む上級生。 怖い。 |
「クロも何か言え」
ってことで、こんどはヤジ側に周り
「Angin Lur!」このくそ野郎が!
とか
「Goblok Sia!」まぬけが!
みたいなことを言わされました。(皆ごめんね)
ヤジを言うのも、2年生と一緒に叱責されることも
ものすごい躊躇してからやったのですが
どちらにしろ私にはものすごい勇気のいることでした。
私にはちょっと間の抜けたヤジしか飛ばせなくて
真剣な2年生に向けて罵声を飛ばしたあと
私の手は少し震えていて、こんなに勇気のいることなんだなと初めて知りました。
ヤジは、愛があって初めてできることなんだな、と分かったような気がします。
みんなは自分がそうされた経験もあるし
もう慣れっこで、ヤジが上手いというと変ですが
ドスの効いた声で、迫力のあるヤジを飛ばし続ける。
すごい。
これらが終わると、
最後に
「お前たちは、これで俺たちの仲間だ!」
みたいなことがあって、この儀式は終了します。
(昔の熱血学園ドラマみたいです)
そしてもう朝の6時を迎えようとしていました。
最初は全く理解できなかったこの行事も
最初から最後まで一緒に見届けて
途中では一緒に参加させてもらって
これをやる意味っていうのが少し分かったように思います。
ネシア人の上下のつながりの強さも。
全部終わって、先輩たちは朝ご飯たべたり
そのまま帰ったりして
2年生は眠りにつきます。
私たち引率組も、そのままバンドンへ戻り
朝ご飯を食べて、各々家に戻って寝ました。
そんなわけで、ネシアの教育の片鱗を垣間みた週末でした。
6 件のコメント:
すごい、、、、。
ほとんど軍隊です!
どうか、このパワーをデザインにつかわないで、と祈るばかりです。あまちゃんなニホン野デザイナーは、ネシアのデザイナーに負けてしまうわ。
・・・本当にそうですね!
でも、すごくパワーはあるのですが、チャレンジ精神は日本よりも弱い気がします。みんな頭がとてもいいので、「無理だな」と分かると挑戦せずにやめちゃうところが多いのです。
無理とわかっていてもチャレンジするのを大切にしたいですね。頭の悪いデザイナーのハツゲンでした。
そんなことおっしゃらず!!
日本人は、やはり忍耐強い民族だと私は思います。恥ずかしがりやで、プレッシャーに弱くても、何度も立ち上がれるのが日本人なのだな、と私には思えています。
コメントを投稿